インドネシアにおいでよ

クニコ・ママが元気をあげる――暴動・テロ・通貨危機…不安材料何でもありのこの国で、日本料理店の女将として和食レストランのままとして十七年間働いてきた著者が語るインドネシアの魅力、生きていく楽しさ、商売の醍醐味。

目次

一　海の向こうへ

二　異文化の中へ入って

三　日本料理店の女将として

四　商売の楽しみ

五　独立・開業

六　ルピア暴落・通貨危機

七　不安材料何でもあり

終章　ティダ・アパ・アパ

　　　あとがき

　私は、十七年もいるのにあまりあちこちへ行ったことがない。それでも、プロウスリブには、子供達とよく行った。そして、何度行っても大好きなバリ。心のイガイガもただれも治してくれる優しさをもつ島。
　ところが、昨年十月十二日、まさかと思っていたバリ島にて爆破テロ事件が起きた。翌日、ジャカルタ駐在員のラグビーチームの中の日本人メンバーが、当店にてバリ島で行われた試合の打ち上げをすることになっていた。ところが、彼らのチームメイトである豪人数名が前夜のその場に居合わせ、消息不明になっていたのであった。とても乾杯など出来る状態ではない。いっしょに試合に出場し、夕食会を共にした後、別行動となったその後の出来事である。この忌まわしい事件によって、海外で得た大切なラガー仲間を失い、その大きな体の内に深い傷を負った彼らの様子は、傍で見ていても痛々しいほどであった。しかし、今年十月の試合に彼らはまた出場すると言う。主力メンバーを失ってしまったチームではあるが、仲間を思い試合に出るという。また、あの悲惨な事件の後バリの人々は、平和を祈り、Ｔシャツ、ＣＤ、コンサートなどの形で訴えながら、その痛みに耐えている。
　そして、そんなバリ島にも観光客が戻り始め、インドネシア全体としても経済が上がり調子になってきていた夜先の今年八月五日、ジャカルタのＪＷマリオットホテルでの爆弾テロ事件。ここは、邦人の利用客も多く、私自身も頻繁に立ち寄る場所であった。まさに、邦人の被害者がいなかったのが奇跡であろう。インドネシアは、ここ数年、ほっとしている間がない。しかし、その都度あちらこちらから、元ご駐在の方々が安否を気遣い、激励のお電話やメールを下さる。これは、私個人に対してではなく、この国に対する愛着から来るメッセージなのだ。皆、インドネシアが好きで、平穏であってほしいと願っているからであろう。そんなにも、ナンダカンダ言ってもやっぱりいい所で、人々の心に安らぎを残す国なのである。この国が、平和で、無理のない、この国らしい発展を遂げることを祈るばかりである。

　最後に、もう何年も前に「書けよ。」と原稿用紙を贈って下さった方、何年間も「まとめろよ。」と叱咤激励して下さった方々。原文をチェックしてスペルミス、記憶違いを指摘してくれた友人、雨だれ方式打ちの遅さを見るに見かねて代わりに打ち込んでくれた美南海さん、写真を提供してくれたじゃかるた新聞の上野記者、私のヘタクソな図を見て、これでは世に出せないと描いてくれた坂井さん、どうもありがとう。そして、発行者になって下さった八尾さん、もしも、この本がどうにか読むに値する内容になっているとすれば、それはこの方のお蔭である。編集長っていうのは偉大な写真家のごとく、どったことのない被写体もこの人の手にかかるとぽつぽつと輝いてくるという感じであった。八尾さんの突っ込んだ問いかけや、見え透いたヨイショなしでは、完成の日の目を見ることはありえなかったであろう。ここに、感謝の意をいっぱい表します。