ドイツ自転車旅行を楽しむ

ドイツの川沿いに整備された自転車道をのんびり走る。グリム童話と古城と森と…。自転車の運び方からコースと宿の情報まで定年後に安く楽しむ方法を紹介します。

　　目次

一、ドイツ自転車旅行のすすめ


　自転車の良さは、自動車よりゆっくり走り、歩くより速く走ることです。自動車はあっという間に過ぎ去ってしまい、きれいな景色をゆっくり見ることができません。歩くのは遅いため行きたい所に行くのに時間がかかり、たくさんの景色を見ることができません。自転車はちょうど良く、ゆっくり景色を見ながら、結構遠くまで行き、たくさんの景色を見ることができます。自転車は旅の素晴らしい乗り物といえましょう。
　自動車による旅行は楽ですが、体を動かさないため体に良いとはいえません。無理をしない自転車旅行は、適度に体を動かすため夜グッスリ眠れ、肥満、糖尿病などの防止にもなります。
　また、自転車は人力で動かすため、高いガソリンを一切使わず安い旅行ができます。そのうえ、排気ガスを一切出さないので、本当に自然にやさしい乗り物です。
　車が少なかった四、五十年前、日本にサイクリング時代があって、人々は自転車を気軽に楽しみ、ゆっくりと自転車旅行をしておりました。（中略）しかし残念ながら現在自転車旅行は難しくなっております。トラック、乗用車がビュンビュン走っている狭い日本の一般道を自転車で旅するのは、身の危険すら感じてなかなかできません。私の友人は自転車旅行中に自動車と接触してケガをしました。これは、車のための道路をたくさん作ったけれども、自転車が走りやすい道路を作らなかったからです。日本は経済効率のみを追い求め、安全にゆっくり楽しむという本当の人間の豊かさを築いて来なかったのです。せっせと働いて支払った税金はどこに消えて行ったのでしょうか。本当に残念です。自転車旅行は一部の人を除いて、死語になったといっても過言ではないと私は思います。
　しかしドイツ、オランダなどの国は違います。見事な自転車旅行の環境を作り上げ、高齢者、女性、若者から子供まで誰でも安心して、楽しく、安く自転車旅行ができるようにしました。本当に素晴らしい国民の財産を作り上げました。具体的には、安全な自転車専用道、舗装された自転車道、川や海に沿った平らな自転車道、道を迷わず旅ができる自転車道路標識と充実した自転車道ガイドブックなどをあげることができます。とくにドイツではBett ＆ Bikeと呼ばれる自転車旅行する人のための宿、安く親切で予約しなくても泊まれるたくさんの宿があります。また、自転車の故障への対応、ツーリスト・インフォメーション（観光案内所）も充実していて、まことに見事だと思います。このようなことに税金を使うなら、誰も文句は言わないでしょう。日本とは根本的に考え方が異なっているのではないかと私はつい思ってしまいます。日本は平地が少なく人口が多く、過密で土地代が高いから難しいという意見もありますが、それだけではないと思います。日本でも工夫すればできるはずです。
　ドイツを旅すると、昔から変わらない古い町、丘の上に立つ古城、屋根の尖った教会、きれいな木組みの家、美しい田園風景、よどみなく流れる川、丘陵、咲き乱れる花、白い峰、深い森、ぶどう畑、広いのどかな麦畑、水車、風車などに出会います。これらをゆっくり見ながら、安心して自転車で旅するなんて想像しただけで胸がワクワクしませんか。ぜひドイツに自転車旅行に行かれることをおすすめいたします。一度行かれたらやみつきになることうけあいです。
　「そんなに言ってもドイツ自転車旅行だなんて無理」と言われる人は、多いと思います。そんな方のために私の体験をもとにこの本を書きました。
　この本はドイツで最も走りやすいヴェーザー川自転車道（メルヘン街道北部）――以下ヴェーザー川自転車道と略します――に絞って書いてあります。この本の通りにやれば、容易にヴェーザー川自転車道の旅ができるようになっています。例えば飛行機の予約、空港での搭乗手続き、自転車の飛行機輸送、ドイツ鉄道の時刻表入手方法、自転車を電車に乗せる方法、電車の乗り換え方法、自転車道ガイドブックの購入方法とガイドブックの見方、自転車道路法規、自転車道の走り方、宿の紹介と予約方法、故障などの対処、更に１日50キロ走る前提で作った旅のスケジュール案など、初めて海外自転車旅行する人の立場に立って、準備、自宅→ドイツ現地→自宅までの全行程の手順を、詳しく丁寧に具体的にわかりやすく書きました。本書は、ドイツ自転車旅行をやってみようとする時に生じる不安を、全部吹き飛ばしてくれると確信します。（続く）