独裁者サダム・フセインの統治下に生きる人々の表情と本音を、気鋭のルポライターが写真と文で伝える。バグダッドの人々/独裁者サダム・フセイン/ようこそイラクへ/イラクでの猥談/イラク・食べ物事情/戦争の爪痕、他。
2 独裁者サダム・フセイン
いたる所にサダムがいる/戦争の象徴/反フセイン運動が頓挫したわけ/言論封殺国家の民衆
3 ようこそイラクへ
国境でしなければならないこと/近代的な首都バグダッド/スーク(市場)にて
4 イラクでの猥談
ムスタファの結婚/毎日五回やっても平気?/指で輪を作って 動かせば/「よし、見せてやる」
5 イラク・食べ物事情
モスクの炊き出し場所で/食欲そそるイラク料理/「お酒?飲んだことない」
6 戦争の爪痕
トマホークの犠牲になった人々/国民を楯にするのは最悪の指導者/聖地ナジャフにて/監視の目を逃れて/貧困の中で生きる人々/経済制裁の犠牲者/人々のためになすべき事は?/「何ということを」/「君たちの国とは違う」
8 白血病の子どもたち
恐怖の劣化ウラン弾/速やかな制裁解除のために
9 戦争回避の道へ
査察を受け入れさせた国際的圧力/維持すべき国連の枠組み/恣意的な「予防線総」の危険/一歩誤れば破滅への道/「私たちのために祈って」/高まる反戦機運/血も涙ももうたくさん
二〇〇一年末、アフガニスタン・タリバン政権に対するアメリカの大規模な軍事行動は一応終息に向かい、その「テロとの戦い」は新たな局面に向かい始めた。サダム・フセイン独裁政権の続くイラクである。
「悪の枢軸」とアメリカに名指しされたイラクは、確かに国連安保理の決議を守らず、大量破壊兵器と生物化学兵器の開発・保持の疑いは未だ晴れない。国際社会のルールを守っているとは言い難い国だということは明白と言っていい。
二〇〇二年八月。バグダッドにも開戦間近という報は届いていた。そこに住む人々は自国の独裁政権、アメリカの軍事的圧力、経済封鎖等、国と国の理論や思惑に人生を振り回されながらも、そこで逞しく生きていた。彼等はよく冗談を言い、そしてよく笑った。実際にイラクに行くまで、イラクの人物と言えばサダム・フセインの顔しか頭に浮かばなかったのが、現在では多くの人々の素朴な表情を思い描くことができる。
イラクに住む人々の素顔を感じて欲しい。すべての思考はそこから始まるのだと僕は思う。