カンボジアと日本

平和は唱えていれば達成されるものではない。自国民を大虐殺したクメール・ルージュ＝ポル・ポト派の執拗な妨害を乗り越え、犠牲を払って…。元カンボジア大使がいま明

目次

第一章　カンボジアと日本 ──はじめに──

第二章　第二次世界大戦終了後のカンボジア

第三章　カンボジア和平の発端と日本外交の関心の高まり

第四章　カンボジア和平パリ会議と日本外交の変貌

第五章　パリ会議の中断からシハヌーク・フンセン東京会談まで

第六章　東京会談からパリ協定調印までの外交交渉

第七章　和平協定調印から国連カンボジア暫定統治機構の発足まで

第八章　カンボジアにおける国連平和維持活動と日本の参加

第九章　和平成立後のカンボジアと日本

　　　はじめに

　「カンボジアと日本」という題の下に、主としてカンボジア和平への日本の関わり合いについて、私の経験に基づき記してみたい。そこで、この第一章では、カンボジアの和平をめぐる問題に先立ちカンボジアとはどのような国で、カンボジア人とはどんな人達であるかということから書き始めたいと思うが、そのためには、どうして私がカンボジアとカンボジア人を愛し、尊敬し、この国にのめり込んでしまったのかということについて、読者の方々にわかっていただくため、四十年にわたる外交官生活を回顧しながら、多少私の「自分史」のようなものを織り込んで行くことをお許しいただきたい。さらにカンボジア和平というものは、カンボジアで内戦や紛争が続いたからこそ必要となったのであるから、カンボジア和平問題に入る前に、第二章でカンボジア独立以来の平和と紛争について述べることとしたいが、それよりも以前のカンボジアの歴史については、カンボジアと日本との関係と併せて、この第一章の中で述べておきたいと思う。 （続く）